
念願の新刊がようやくカタチになりました。
「不安な気持ち・いやな気分がラクになる本」。私のソロデビューです。
この本は、「仕事や生きることに迷いながらも、なんとか前に進もうとしている人」「前に進みたいのに、不安に悩まされて苦しい思いをしている人」――そんな人の役に立ちたい、という思いで書きました。
6年前、病床で来る日も来る日も自分のこころと向き合った日々。そのときはじめて芽生えた、家族や親しい人以外の「誰か」の役に立ちたい、という思い。
「いまの私みたいに、こころのなかに渦巻く思いに苦しんでいる人の役に立てたらいいな」。
その思いが、この本の原点です。
不安やいやな気分に足をとられて歩みが遅くなっている人、ふだんは不安知らずだけど、状況の変化からこころの抵抗力が落ちてしまっているとき。そんな人、そんなときに、読んでもらえたらな、と思います。
さて、この本の企画が通ったのは、去年の6月17日。
そのころ、体調を崩して寝たり起きたりだった私は、「早く元気になって書こう!」と気持ちが高揚したのを覚えています。
2冊の本を夫と共著で出したときから、いつか自分ひとりで書きたいと思っていましたが、その最初の関門が、「出版社で企画が通る」こと。
あの日から1年。いま、できたての本を手にし、「過ぎてみればあっという間だったな」と、感慨をかみしめています。
私はパターンを変えるのが苦手ですが、この本では新しいことにも挑戦しました。アイデアのもとは、編集者のイワサキさん(はじめての本:「『聞き方』ひとつで人は育ち・人は動く」でも担当)です。
イワサキさんからは、思いもよらない提案をあれこれ投げかけられ、そのたびにどきどき、どぎまぎ。だけど、やってみてよかった、と思います。チャレンジって、してみるものだなぁ、と。
第1章から第3章は、前半がシチュエーション・ストーリー、後半がその解説という構成で、ストーリー仕立てもイワサキさんのアイデア。初めの構想はストーリーというより「事例紹介」に近いものでした。
執筆はじめの段階で見本原稿を見せたとき、
「シチュエーション例をシナリオ風にするのはいかがですか」
という最初の提案。
ひぇっ、シナリオ風? 書いたことないけど…。
躊躇したものの、なんとかトライ。四苦八苦して“シナリオ風”に書き直しました。だけど、今度は、
「ちょっととっつきにくいかなぁ。小説っぽい感じというか、もう少しなめらかさがでるといいんですが」
えぇっ、小説? シナリオじゃなくて? わー、どうしよう、書けるかなぁ…。
でも、自分に言い聞かせました。しのごのいってる場合じゃないよね。イワサキさんがそのほうがいいと言うんだからそうなんだよ、きっと。新境地が開拓できるかもしれないじゃない。
小説風、最後の最後まで苦労しましたが、チャレンジのしがいはありました。
私には考えもつかないアイデアがもうひとつ。それは、「ページの下1/3を余白にし、そこに欄外コラムを入れる」というものでした。
本文以外にコラム? そんなに書けるかなぁ? 本文だけで手いっぱいなのに…。
だけど、結果的にショートコラム36本が書けました。これが、やってみたらすごく楽しかったのです。「こんなふうに書いてもいいんだ!?」と新鮮な驚きや発見がたくさん。書くことがまた一段と好きになりました。
せっかく「書く場」を与えていただいたのだから、大いに活用しようよ、と前向きにとらえられたのも自分としてはうれしかったことです。「どこかで言うべきだ」と常々こころの奥に抱えていたことを、この際思い切って書いてみよう、と。
たとえば、それは自閉症の弟がらみのことだったり、こむずかしい専門用語やカタカナ語乱用への反発だったり。オマケのコラムをたくさん書いたことで、思いがけない収穫がありました。
さて、36本のなかでおすすめするとしたら「不安をあおるお医者さん」シリーズでしょうか。このお医者さんたち、全部実話なんです。
本のタイトルって著者が決めるように思われていますが、最終的には出版社の会議で決定されるものです。他はどうか知りませんが、私の場合、著者に決定権はありません。
私にはイメージしていたタイトルがありましたが、「男性が手に取りにくい」「小説っぽい」ということで却下されました。――「きょうも不安とつきあうわたし」。――結構気に入ってたんですけど。
イワサキさんからは、「『不安な気持ち』と上手につきあう本」という提案。いいな、と思ったものの、私の好きな精神科医の「『不安な心』と上手につきあう本」に酷似。考え直してほしい、とお願いしました。
決定期限が迫るなか、しっくりくるタイトルを求めてことばの連想ゲーム。最終的に決まったのは、ご承知のとおり「不安な気持ち・いやな気分がラクになる本」です。
タイトルにも、オビのキャッチコピー(「自分のこころと上手につきあえば、もう、ふりまわされない、もてあまさない」)にも、私が連想ゲームでひねり出したキーワードが盛り込まれていて、ほっとしたものです。
今回の仕事であらためて痛感したことがあります。「本はひとりでできるもんじゃない」ということ。
はじめに「こんなことが書きたい!」というテーマがありき、ではありますが、企画・構想の段階から編集者(出版社)と十分に絡まなければ前には進めません。脱稿のあともどんなイラストを入れるか、表紙のデザインはどうするのか、装丁、ページ組み、書体、刷色、…といったさまざまなことがたくさんの人たちによって考えられ、進められていきます。
私も自分がからっぽになるまで書きましたが、カタチになったのはイワサキさんをはじめ、かかわったさまざまな人たちのおかげ。ほんとうに感謝しています。
あとは、読み手がいて初めて本は成り立つもの。ひとりでも多くの人に読んでいただきたいなぁ、と思います。そして、私の本が少しでもお役に立つことができたなら、何も言うことはありません。
ただ、なかには「べつに自分は不安なんか感じてないよ」という人もいます。そういう方には、こんなふうに不安を抱えている人もいるんだよ、ってことを知ってもらえればいいと思います。
[ 2004年7月7日 伊藤敦子 ]
編集者イワサキさんがココログ日記で本書について紹介しています。こちらから
